コンセプト設計からパターン開発まで、ブランド価値を高める一貫したクリエイティブ開発プロジェクトを実践!

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東日本大震災で 町民避難を余儀なくされた福島県浪江町。
2020年には道の駅が開設され多くの人の流れが戻ってきました。
グラグリッドではこの機に、浪江町のお土産やパンフレットを持ち運ぶ紙袋のデザインを担当しました。
浪江町の産業や文化、これまでとこれからといった文脈を汲み取り、コンセプト設計からビジュアルパターンの開発、フィニッシュワークまでのデザインプロジェクトを実践していきました。

課題

来訪者が多くなるにつれ、道の駅や役場ではお土産屋や資料を入れるための紙袋が必要になった。
単に紙袋を制作するのではなく、復興に取り組む新たな浪江町の姿を何らかの表現で感じてもらう必要性があった。

共創と取り組み

コンセプト設計やプロトタイピングといったデザインアプローチを活用しながら、ビジュアルアイデンティティ(VI)を構築し、浪江町の産業や文化を汲み取った表現を実現した。

価値化したこと

・コンセプト設計やプロトタイピングを通じて、目指すべきデザインを明確に共有することができた。
・浪江町に関わる人たちが共感できる表現を形にした。

課題&実現したいこと

「浪江町らしいね」と思ってもらえるデザインを形にしたい!

東日本大震災で甚大な被害を受けた福島県浪江町(※)は、現在、「夢と希望があふれ 住んでいたいまち 住んでみたいまち」という理念を掲げ、復興を進めています。

※:東日本大震災は、福島、宮城、岩手を中心とした東日本全体に甚大な被害をもたらしました。
福島県では、東京電力福島第一原子力発電所の事故のため、双葉郡の市町村の住民は避難を余儀なくされ、浪江町21,000人の町民は全国に散り散りになりました。
その後、浪江町内の避難指示が継続する中、除染やインフラ復旧、生活基盤の再生が進められました。
平成29年3月31日には、一部地域の避難指示が解除され、一部地域での居住ができるようになるなど、復興に向けた取組が進められています。
一方、現在も多くの町民が福島県内外での避難生活を余儀なくされていますが、令和4年9月より特定復興再生拠点区域では準備宿泊を開始、立入規制が緩和されるなど、令和5年3月の避難指示解除を目指し、着実に復興を進めています。
【初めての方へ】すぐわかる浪江町(なみえまち)の現況 より)

紙袋を作るにあたっては、浪江町で暮らす人、かつて暮らしていた人、関わりのある人、観光やホープツーリズム・再生可能エネルギー利用の視察に訪れた人たちが、紙袋を手にした際に浪江町に明るい未来を感じ、浪江町を慈しむ体験が作り出せたらという想いがありました。
そのため浪江町の産業や文化に誇りを持ち、「浪江町らしいね」と思ってもらえるデザインを目指しました。

グラグリッドでは、メンバーの尾形が浪江町役場の職員として勤務(2017年~2019年)していたこと、三澤が浪江町のホームページ『浪江町ガイドブック』のデザインを手がけていたこともあり、浪江町の復興に関わってきました。
浪江町の復興に関わってきたグラグリッドだからこそ可能なデザインも期待されていました。

浪江町ガイドブック

共創と取り組み

浪江町の産業や文化を汲み取り、コンセプト設計やプロトタイピングに取り組む

デザインプロセスとして、ステップ1:コンセプト設計→ステップ2:プロトタイピング→ステップ3:制作という過程で進めていきました。

コンセプト設計においては、ユーザー像、コンテクスト、用途・目的などを検討し、「チアフル」「シンプル」「海と大地の恵み」という3つのキーワードを導き出しました。コンセプトを受けて提案したのは3つのアイデアです。

コンセプトシート

 

▼A案 THE NAMIE ブランド
A案

▼B案 なみえのソウルカラー
B案

▼C案 なみえカルチャー模様
C案

この3案からB案「なみえのソウルカラー」がコンセプトとして採用されることになりました。

コンセプト決定後、 グラフィックデザインを検討するにあたり、 ビジュアルパターン(模様のデザイン)を開発していきました。浪江町に由来する山・海・自然・食べ物・工芸などのモチーフを展開して、浪江町の文化や産業といった文脈を捉えた模様を0から考案。浪江町の未来に希望を抱けるカラフルな色味の設計にも取り組みました。

山・海・なみえ焼きそば・しらす・大堀相馬焼(青ひび、ハート形の穴の波千鳥の足跡)・かもめ・かぼちゃ饅頭などをグラフィックのモチーフとして展開。
色味についてもそれぞれのモチーフをベースに設計されています。グラフィックのモチーフは、道の駅なみえリーフレットにも、あしらいとして利用されています。

模様の様式と意味の図解

▼道の駅なみえのパンフレット

道の駅なみえパンフレット

 

実際の大きさや見栄えを、チームメンバーと検討していくために、 実際大の試作品を複数案作り、表面・裏面・側面への展開を探っていきました。プロトタイプ

価値化したこと

浪江町らしさを表現し、なみえブランドの創出を目指した

今回のデザインプロジェクトのケースでは、「コンセプト設計」・「 ビジュアルアイデンティティの開発」・「プロトタイピング」のデザインアプローチを活用しました。

・「コンセプト設計」:浪江町の産業・文化背景を汲み取りながら「なみえソウルカラー」といった言葉を定義し、方向性を定める。
・「ビジュアルアイデンティティの開発」: 浪江町の復興ストーリーやメッセージを織り込んだビジュアルパターンをデザインする。
・「プロトタイピング」:デザイン検討において、スケッチを描いたり、コピー用紙を使って紙袋を作ってみて、イメージしやすい形に落とし込んで共有・検討する。

これらのアプローチを通じて、クライアントである浪江町の職員の方々と共にアイデアを出し合い、感覚的な判断基準も共有しながら進めていくことができました。

グラグリッドメンバーのコメント

オリジナルグッズの開発では、デザインのコンセプトを策定していくことはとても重要です。
今回難しかったのは、より感性的な要素、例えば「気持ちを前向きにしていく」とか「懐かしく感じられる」といった要素を大切にしながらプロジェクトを進めていくことでした。
たくさんのスケッチやプロトタイプをもとに議論できたことで、浪江町を訪れた方たちの感情に響くデザインが実現できたと思います。

また、たくさんの方からご好評の言葉をいただき、とても嬉しく思います。
(三澤)