閉じる

常識、固定概念、個人の壁。解放されて創造的に羽ばたく子供たち!

  • クリエイティブ人材育成

第四次産業革命の進展とともに、日本の産業競争力の低下が指摘されています。この状況を前に、日本の企業では、常識にとらわれない創造的活動を創出する目的で、絵を用いた視覚化の活用が広がっています。
新宿区立落合第六小学校(以下、落六小)では、こうした企業の創造的活動の創出に注目。創造的活動を支えるスキルを「未来の社会において必要な基礎学力」ととらえ、総合学習の時間を中心に授業や学校のあり方を大きく変える挑戦を続けています。

課題

「常識にとらわれない柔軟な活動を生み出したい!」。そんな思いから、落六小ではプロジェクト型の総合学習授業において、文字を使ったファシリテーション・グラフィックを導入。しかし、生徒たちは「文字を書くこと」にとらわれ、話し合いが停滞。本来の目的である柔軟な発想が起きづらい課題を抱えていました。

共創と取り組み

グラグリッドでは、落六小の生徒たちの話し合いの観察や先生方へのヒアリングを通じて課題を発見し、小学生向けの創造的人材育成のプログラムを新規開発しました。校長先生や副校長先生、5・6年生の担任の先生方とチームを結成し、全4回の授業を実施しました。

価値化したこと

未知のものと柔軟に向き合う文化が5・6年生を中心に醸成されていきました。生徒たちの中では、他者へ話しかけて心を開く、自分を発揮できる場を見つける、授業のノート表現が多様になる、下級生へ促す関わり方が増えるといった、創造的活動を支え推進する「変化の兆し」が見えるように!

課題&実現したいこと

落六小は、地域・そして日本を担う人材育成を目的に、地域課題解決へ向けた学習等、地域を巻き込みさまざまなプロジェクトを積極的に展開していました。その中核として、異なる学年の生徒とともにプロジェクトを進め、柔軟で常識にとらわれない活動を創り、社会と関わって学びを得ることを目指す総合学習の時間として『落六DASH』を位置付けています。

総合学習『落六DASH』時間では、プロジェクトを推進する力として、文字を多用したファシリテーション・グラフィック が導入されていました。しかし、生徒達は「文字をどう書くか?」にとらわれ、本来の目的である柔軟な発想が起きづらく、結果として固定概念に縛られてしまうという課題を抱えていました。

この状況を見た竹村校長先生は「生徒たちが、常識にとらわれない柔軟な創造活動を推進していくために、グラフィックレコーディングで用いられている絵の力が必要だ」と痛感。「生徒に指導できるよう、先生に教えて欲しい」と、グラグリッドへ依頼がありました。

共創と取り組み

生徒たちの変容が、先生を、そして学校を変えてゆく!

竹村校長先生の相談を伺っていく中で、私たちは生徒の変容と未来の社会での活躍が、この相談のゴールととらえました。活動主体である生徒自らが描き出すことこそが、先生の変化を生み出し、地域の変化を生み出していくと考えたのです。

これまで企業内の創造的活動を支えるためのプログラムを私たちは開発し実践しつづけてきました。
しかし、小学生向けのグラフィックを用いた創造的人材教育のプログラムは今回が初めてです。小学生の生徒自らが描き出す状況は、どうしたら生み出せるのでしょうか? まず、私たちは「総合授業での生徒たちの話し合いの様子を観察」「先生方全員へのヒアリング」を実施して、落六小の状況を把握することからスタートしました。

どうしたら、生徒自らが描き出す状況を生み出せる?

総合授業での生徒たちの話し合いの様子を観察した結果、依頼時からの指摘である柔軟な発想が起きづらく、固定概念にとらわれる背景には、話し合い自体が型にはまり、固定化してしまっている状況があることを突き止めました。
例えば、話し合いのプロセスの中で、発話者が決まっている、多数決に頼りすぎる、話し合いよりも個々の作業へ関心が向いてしまうという事象が見受けられました。また、生徒によっては、「発言することが怖い」という、発言すること自体への怖れや諦めの態度も見られました。

一方で、先生方全員へのヒアリングの結果、先生方も生徒たちの話し合いのプロセスに対する課題を感じており、話し合いの質を上げるための活動に期待を持っていることが分かりました。
しかしながら、「自分が生徒たちにグラフィックレコーディングを教えることができるのだろうか」「本当に生徒たちの話し合いの質が変わるのか」という心配の声や、学年による発達状況に応じた授業の配慮が必要であるという指摘もいただきました。

こうした声を受けて、私たちは竹村校長先生らと、「いかに生徒の『未来を進む力』を育むか、そして学校という生態系を変えていくか」をテーマに議論を重ねていきました。その結果として、竹村校長の「生徒が変わればおのずと先生も変わる」という力強い言葉の後押しのもと、総合学習の時間内での生徒向けの授業を行うことを決めたのです。

日本初!小学生向けのグラフィックレコーディングを活かした創造的人材育成の授業、スタート

小学生に対して授業を実施するにあたり、「楽しむ」「空想する」「きく」「まとめる」という4ステップから構成された「おえかきシンキング」と名付けたプログラムを作成しました。

1:「楽しむ」
身体性を目覚めさせ、絵を用いたコミュニケーション方法を全身で学ぶことを目的としています。生徒たちは、一人一本ペンを持ち、体育館に敷き詰められたロール紙を用いて、ペンの持ち方やコミュニケーション・創造のための絵の描き方を学んでいきます。
集大成として、1班につき1枚のロール紙(10m×60㎝)に、1つの「新しい星と、そこに住む新しい生き物を創ろう」という挑戦を実施!生徒は一人一人、自由に新しい星の要素を描きつつも、班のメンバーと絵と絵をつなげて、相互のストーリーを展開させ、新しい星の姿を創造していきました。

2:「空想する」
身の回りから未知の世界を考え出す方法を学ぶことを目的としています。生徒たちは、用意された雑誌やチラシから、気になった要素を切り抜きコラージュし、生き物を形作りました。
そして、形作った生き物を手で持って、教室中を歩き回り「その生き物の動き方、住んでいそうな場所や特性」を考え、生き物のいる未知の新しい世界・文化を発想し、展覧会にて発表し合いました。

3:「きく」
ともに新しい何かを創るために、考えの異なる他者の背景や話を深くきいて、受け止め合う態度で学ぶことを目的としています。生徒たちは、授業前日まで行われていたイベントについて、自分のストーリーを思い出し、心の声を聞きました。
その後、「他者の話を深くきく」リスニングペンダントというツールを用いて、相手のストーリーを聞くこと、観点を持って聞くことを体験しました。そして「どうききとったか」を話者に伝え、普段の聞き方とどう違うのかを考えていきました。

4:「まとめる」
さまざまな声を受けとめ、関係性を見出し、存在できる世界を探る方法を学ぶことを目的としています。生徒たちは「未来の西落合に創りたいもの」を一人一人発想してキーワード化したのち、ペアの相手のキーワードを絵で視覚化し、相互にすり合わせていきました。
集大成の「未来の西落合のまちを描こう」は、4名の班で「1枚の模造紙に、班全員の創りたいものがイキイキしているまちを描こう」というルールで実施。生徒たちは相対する要素にどう折り合いをつけるか、興味に応じて分断された街をどのようにまとめるか、議論をしながら街の形を模索し、描いていきました。

授業、活動を支える仕組みづくり

また、プロジェクト中では、授業を支える仕組みづくりも平行して行いました。

授業後には、毎回私たちと先生方が振り返りを実施。各クラスの状況や課題、次への展望をディスカッションし、リアルタイムでグラフィックにしていきました。この振り返りでの学びを未来の教育へ活かすために、日本デザイン学会にて研究発表を行いました。
小学生のための「おえかきシンキング」授業から見た創造的人材育成への影響要因
(日本デザイン学会 第66回春季研究発表大会)

また、毎回の授業にて、生徒たちの変容を逐一記録として追い、振り返りや活動の広がりを生み出すためにワークショップフォトグラファーを導入しました。

価値化したこと

柔軟に、未知のものと向き合う文化の醸成

柔軟に未知のものと向き合う文化が5・6年生を中心に醸成されていきました。

「楽しむ」…生徒たちが正解のない問いに対し、一人一本ペンを持ち、巨大な紙に描くことで、個人の壁や固定概念から解放されていきました。

「空想する」…生徒たちが身体を使った探索、抽象化を行い、他者と話していくことで、見立てたものから飛躍し、新しい意味を発見していきました。

「きく」…生徒たちが自分の心の声を聞いて受け止める態度を学び、他者の声を受け止める土台を育んでいきました。

「まとめる」…生徒たちそれぞれが折り合いをつけるための対話、他者の世界への貢献、自分の世界に他者が交わることへの許容を通じて、新たな世界を創造する中でお互いが共存するあり方を学んでいきました。

生徒たちの変化から生まれた、学校の変化

こうしたプロセスを経て、生徒たちの中に徐々に創造的活動を支える「変化の兆し」が見えるようになりました。他者へ話しかけて心を開く、自分を発揮できる場を見つける、授業のノート表現が多様になる、下級生へ促す関わり方が増える…ひとつひとつは小さな兆しです。

しかし、そうした兆しを生徒たちがお互いに気付き、そして先生方も気付いていった結果、生徒が主導して授業を担ったり、道徳の時間で自由に描きながら考えるようになったりと、授業の形がどんどん変わっていきました。生徒が常識にとらわれず、新しいものを生み出していく柔軟性を持って活動していける土壌が豊かに育っています。

参考)落六における総合学習授業の取り組みはグラグリッドのnoteでもご覧いただけます。

グラレコ×教育!新宿区落合第六小学校×グラグリッドの挑戦

クライアントの声

「この授業の意味は、「解放」という側面が一番強かったです。
・(こうあるべきという)かたちからの「解放」
・(こうあるべきという)方法からの「解放」
・(こうあるべきという)関係からの「解放」
・(こうあるべきという)人間からの「解放」。
授業で生まれた体験知を、学校中に循環させることで、普段の授業での生徒の学び方の変容を狙っています」

「新宿区落合第六小学校は、2019年度、文部科学省から「教育課程特例校」認定を受けました。

認定を受けた授業『みらい科』においては、本校の規定する汎用的スキルの育成とともに、それらを有機的に育成するツールとして、グラフィックレコーディングの手法を全校に取り入れていきます!この授業を通じて、情報交流を活発にし、地域や保護者を巻き込んだプロジェクト学習と絡めていくことで、将来ばかりでなく現在の生活や学びに生かす探究的な学習を展開していけると確信しています。」

新宿区立落合第六小学校 校長
竹村郷氏