施設のあり方を再定義し、統一した世界観の体験デザインを目指す

  • デザインプロセス構築
  • ビジョン創出
  • ブランディング

課題

遠野市の観光3施設(伝承園、ふるさと村、水光園)は、施設の特徴が異なるにも関わらず、類似したイベント企画や展示などを実施している現状があり、各施設の特徴を十分に活かした顧客体験を提供する方向性を模索しておりました。

共創と取り組み

施設のコンセプトとして設定する世界観を見い出すためのフィールドワークとワークショップのプランニングおよびファシリテーションを実施。さらに、施設リーダーに対するリーダーシップ教育を兼ねたプログラムを展開しました。

価値化したこと

3施設それぞれの特徴を活かしたコンセプトを導出し、それを世界観グラフィックとして可視化。関係者全員が、設定したコンセプトの共通認識を持つことができました。

課題&実現したいこと

各施設の特徴が異なるにも関わらず、企画や展示は類似してしまう

最初に打診をいただいた時、プロジェクトオーナーである遠野ふるさと商社の杉村さんからは、「これらの3施設すべてに曲り家(まがりや:母屋と馬屋が一体となったL字型の住宅)があるのですが、どの施設も曲り家を売りにしてしまう。そして、どこかの施設で曲り家を使った体験イベントをすれば、同じような企画を他の施設でも実施してしまう。施設間で、隣の芝生は青いといったところがあるかもしれません」と、コンセプト再設計のプロジェクトをはじめる背景をうかがいました。

各施設の特徴を一言で表現したい

各施設、それぞれに特徴があり、よさがある。そのよさを一言で表現し、施設らしさを明確化させたい。そんな想いを持っていた杉村さんとプロジェクト計画の検討を重ね、約3ヶ月間の期間で実施できる共創プログラムを立案し、本プロジェクトが動き出しました。

共創と取り組み

事務局と施設リーダーによるプロジェクト体制をデザイン

プロジェクトを進めるにあたり、決定されるコンセプトを各施設ごとに浸透させていくには、想いを持った各施設のスタッフが自分ごととして、このプロジェクトに参画してもらうことが重要だと考えました。

しかし、施設で働くスタッフ全員が一度に同じ意識を持つことは簡単なことではありません。そこで、施設ごとに、より熱い想いを持った方をプロジェクトのリーダーとして任命し、その施設リーダーを通じて施設コンセプトを浸透させる構想を描きました。

また、その施設リーダーを支援し、本プロジェクトのファシリテーションを担当する事務局を、遠野ふるさと商社、岩手銀行、グラグリッドの三社で構成。施設リーダーのリーダーシップ育成の側面も担う取り組みとしました。

ここで大切になってくることが「関係の質」です。気になること、言いたいことが気軽に言い合えるような関係ができるよう、事務局と施設リーダーとの関係構築のプロセスからはじめました。キックオフ会議はそのひとつ。会議では、グラグリッドが得意とするグラフィックを活用したワークをオンラインで開催。

リーダーそれぞれの価値観を描き出したことで、各リーダーの施設に対する想いや考え方の違いを理解し、共有。さらには、プロジェクトに対する使命と行動目標などを明確化できたことで、プロジェクトを推進していく熱量を高めながら、関係性を構築することにつながりました。

全体像と立ち位置を把握するプロジェクトジャーニー

プロジェクトを進めていく上で、全体のステップはもちろん、施設リーダーと事務局の立ち位置も共通の認識を持つ必要がありました。そこで、描いたものがプロジェクトジャーニー。

「ステップを進めていくのは施設リーダー自身」
「事務局は俯瞰してそれを支援する」

この関係を視覚的に理解、共有するツールとして役立てました。

他者視点で施設の”あるもの”を探すフィールドワーク

各施設の特徴を見い出すために、どのような資源が使えそうか発掘するフィールドワークを実施。参加者の多くは、伝承園、ふるさと村、水光園、いづれかの施設に所属しているスタッフの方々。そのため、日頃見慣れている自分の施設だと、その価値に気づかず見過ごしている資源もたくさんあるはず。

そこで、施設リーダー以外は自分が所属していない施設のチームに入り、さらには行政や観光協会、移住者の皆さまもチームに加わり、他者視点による施設の”あるもの”探しを行いました。

その時に参考としたのが、8つの観点。これらの観点があったことで、さらに資源を発掘する観察眼が高まり、各施設とも70〜100以上の資源を発掘することができました。特に、「もったいない」の観点は多くの発見をもたらせていました。

隠れていた特徴に光をあてるコンセプト設計ワークショップ

フィールドワークから発掘されたたくさんの資源。これらは、どのような価値を持っているのか?その価値の観点で分類・統合していくワークショップをフィールドワークの翌日に開催し、その施設の特徴を浮き彫りにしました。

各施設とも、6〜8の観点でまとめられたのですが、ここからがポイント。その観点の中でも、優先したい観点を選ぶことで施設ならではの特徴を際立たせました。

「遠野らしさを感じられる」

こんな特徴も出てきましたが、それは他の施設でも出てきているもの。それを特徴として押し出しては、差別化できないからもっと優先すべき特徴があるはずだ、と施設の隠れていた特徴にスポットライトを当てていく作業が続きます。



そして、新たに見いだされた施設の特徴をベースに体験アイデアの創出し、その価値を提供できる施設とは?との問いの答えを探すプロセスにより、各施設とも特徴あるコンセプトが生まれ、大きな収穫が得られたワークショップとなりました。

世界観を描き出し、コンセプトとしてブラッシュアップ

ワークショップで決まったコンセプトではありましたが、後日、施設リーダーと事務局間で検討を重ね、さらに磨き上げました。その際に活用したのが、エレベーターピッチ。これにより、自分たちの施設の存在が定義づけられたように思います。

「そうか、伝承園は野外博物館だったんだ!」
「ふるさと村は、体感村って言われればそうだな」
「水光園は、新しいカタチの保養所か」

グラグリッドでは、これらを施設の皆さんが共通の認識をもてるように、世界観としてグラフィックとして描き出しました。

プロジェクトの「おわり」であり、「はじまり」のコンセプト発表会

決定したコンセプトを、ワークショップ参加者や観光協会の方々などと共有する発表会を開催。
約30名の方々が集まりました。これまでの活動をふりかえる動画や施設リーダーの皆さまに登壇いただきディスカッション、そして参加者の皆さまがそれぞれの施設のコンセプトに基づくアイデアを創出するワークショップ。これまでの3ヶ月の集大成となる会で、参加された皆さんと施設のこれからの取り組みがつながった瞬間でもありました。

これで、施設コンセプトを決めるプロジェクトとしては終結。
それと同時に、1年後、2年後に向けて各施設ともコンセプトに基づく世界観を体現していく施策を検討し、実行していくプロジェクトがはじまりました。


価値化したこと

これまで見いだせなかった各施設らしい「コンセプト」を創出

ワークショップの終わってから、実はこれまで、各施設とも、こんな施設というコンセプトというイメージは何となくあったと杉村さんはおっしゃっていました。しかし、ある程度予想はしていたものの、今回、それ以上のコンセプトが見いだされたともおっしゃっていただけました。

これは、他者視点でのチーム制、ワークショップを含めたプロジェクトのファシリテーション、事務局内でのコミュニケーションが、結果の質につながったのではないかと思います。

関係者に施設のコンセプトを分かりやすく共有

最終的なコンセプトに決定したコンセプトを“世界観グラフィック”として描いたことで、イメージを共有し、アイデアを創発する基盤をつくりました。これにより、施設の従業員の皆さまはもちろん、自治体、観光関係者の方々にも、コンセプトを容易に理解いただけることができました。

クライアントの声

おかげさまで今回のワークショップを経て「コンセプト」の重要性が、現場にもかなり浸透してきたと実感しました。
今後はテストマーケティングとして、施策の詳細設計と実装を現場側で少しずつ進めていき、お客様の反響を確認しながら、実装施策のPDCAを回したり、さらなる投資を検討していこうと思います。
大掛かりな設計を検討する際は、しっかりプロセスに沿って検討を進めていきたいと思いますので、また相談させてくださいませ。
1年後にはもう少し違った施設になっていると思うので、引き続き温かく見守っていただければ幸いです!

(株式会社遠野ふるさと商社 杉村亮氏)

グラグリッドメンバーのコメント

今回のプロジェクトでは、スタッフの皆さまの施設に対する愛情が、プロジェクトの原動力になっていたと感じています。フィールドワークやワークショップでは、思考を広げ深める観点や問いをきっかけに、施設を想う力がうねりとなって、魅力的なコンセプト創出につながりました。
また、特に施設リーダーの方々は、施設をよりよく変えていこうとするマインドや視点の変化を実感されたことが、コンセプトを設定できたことと同じくらい、今後の施策を進めていく上での力になるものと思います。
今後の具体的な施策の検討においても、グラグリッドが皆さまの創造的活動のパートナーとして貢献できればと考えております。(尾形)